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「申し訳ないが、もう息子の前に姿を現さないでほしいんだ」
要領を得ない話の末、わけが分からないまま突きつけられた最終通告を聞いた瞬間、全身から嫌な汗が噴き出した。
人はこうも手のひらを百八十度返してしまえるものなのか。
目の前に出された茶封筒と、対面に座る夫婦を見比べる。半年後には義理とはいえ、自分の両親になるはずの人たちだった。
A5サイズの封筒が、異様な厚さで膨らんでいる。
「納得できません。ショウくんに会わせてください」
こらえていた吐き気が再びこみ上げる。
曇り一つなく磨かれたガラス張りの一枚板の卓上に、青ざめた自分の顔が映っていた。
「それは出来ない。これは私たちからの心ばかりのお詫びの気持ちだ。これで、その……お腹の中の子のことは解決してほしい」
――――――――解決。
ここに至って、どうしてそんな言葉が出てくるのだろう。無意識のうちに、私はほんの少しだけ膨らんだお腹を手で抱え込んでいた。
この子の半分は、彼らの血も引いているはずなのに。
「とにかくもう一度、彼と話をさせてください」
婚約者から一方的に別れを告げられてから、今日でちょうど一週間が経つ。
何度連絡しても、一向に反応は返ってこなかった。
業を煮やし、家に押しかけた私を出迎えたのは、彼ではなく彼のご両親だった。
「本人と話をしなければ、何も……」
「ごめんなさいね、サオリさん。ショウはもう、あなたに会いたくないって言っているの」
ずっと黙っていた母親が、私を遮るように言い放つ。
「この子は、ショウくんの子なんですよ?」
「申し訳ないけど、ショウは認知できません。それに、あなたも社会人でしょう。籍を入れる前の妊娠というのは、半分は自己責任ではないかしら?」
あまりの言い草に、喉の奥がふつふつと煮えたぎって言葉が出てこない。
しかし私を見据える瞳に、怒りを通り越して寒気が走った。
この人は、こんな冷たい顔をする人だっただろうか。
一週間前まで、いつも柔和な笑みを絶やさない、優しいおばさんだと思っていた。
なのに――――――――
「産むかどうかは、最終的にあなたが決めることですけど。まだお時間はありますから、よく考えてみてちょうだいね」
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