世界を半分手に入れた男の話。

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 しかしまずは仕事だ。目下急がなくてはならないのは、国境線の明確化である。下手に国境を越えられると、人員の管理その他が上手くいかず、滞ってしまう。この点はE氏とも一致しており、折半して壁を作る事になっている。その資材や人足の確保を急がねばならない。  書類上の数値をあれこれと弄りながらあ~でもない、こーでもないとやっているとドタドタッと凄まじい足音が振動と共に近づいてきた。 「総統! W総統! A地方で総統に不満を持った民族が反乱を!」 「総統! B地方では元の隣国との融和政策が上手くいかず対立が暴動に発展してます!」 「総統! C地方で落盤事故が!」 「総統! M地方とN地方の貨幣価値の不一致から経済格差が!」  わーわーと情報を持ってくる部下達。どれも喫緊の課題で、総統の決済待ちだという。  W氏は頑張った。頑張って頑張って、解決に向けて奔走した。それこそ玉座に座っていられる時間などほとんどないほどに走り回った。  一つ問題が解決すれば、別なところから問題が起こる。それを解決すればまた別な場所が。  部下に任せようと思ったが、最終的な決断は結局自分に回ってきて、一つ一つの案件に十分な時間を割けないまま決済。それがまた別な問題を引き起こして却ってW氏の仕事は雪だるま式に増えていった。  W氏は、疲れてしまった。  せっかく、半分だけとはいえ世界の支配者になれたというのに、その実態は誰よりも扱き使われる社畜のような状態だったのだ。     
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