世界を半分手に入れた男の話。

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 更に不幸な事に、建国の際に総統を交代するシステムを組み込んでいなかったのだ。 いや、正確に言えば、意図的に組み込まなかったのだ。  総統になった時の彼はこう思った。  せっかくこの地位になれたというのに、交代出来るようにしては不埒な人間が私の座を狙って余計な企みをするかも知れない。私が建国したというのに、私を追い落として誰かが総統に就くなど許される事ではない!  W氏は愚かだったあの時の自分を責めた。彼は死ぬまで、国の為に休むことなく働かなくてはならなかった。  数年して、W氏も年を取った。無茶な生活をしていた為か、大分健康状態もよろしくない。  体があちこち痛んではいるが、彼は却ってその事を喜んだ。  そうだ、死んだら働かなくて良い。この責務から解放されるんだ!  そう考えていた矢先、技術研究省から報告が届いた。 「総統閣下! お喜び下さい! この度生体の細胞の若返りの研究が成功しまして、ただ一粒薬を飲めば体中の細胞が活性化し、理論上では無限に生き続けられる事が判明しました!  貴重な研究成果ではありますが、誰もが欲しがるこの技術。取り合いになれば戦乱が巻き起こりかねない為、これを世界中に知らしめる訳には行きません。そこで、最も有効な活用方法があります。     
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