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が、国民感情は全く別なところにあった。
「我らが愛するW総統の為に! 国家の為に尽くすのは今だ!」
「そうだそうだ! 物資の不足が何だ! 精神で補うのだ!」
「閣下の為に!」
「総統閣下万歳!」
大熱狂であった。W氏のこれまでの国内における尽力が実を結んだ瞬間であった。国民は全て、国家の父であるW氏を崇拝していたし、その為に死ぬ事を厭わなかった。
W氏は頭を抱えた。
これだけ盛り上がっていれば、一気呵成にE氏の国を攻め落とせそうなものの、敵も然る者、猛然たる反撃を繰り出し続け、なかなか決着はつかなかった。
10年程の激戦の後、戦争はE氏とW氏によって和平を結ぶ形で終結した。
W氏は和平交渉の為に久々にE氏に会って、ぎょっとした。
自分は若返りの薬を飲んでいた為、精々目から生気が失われるくらいで済んでいたが、E氏はおよそE氏の形をしていなかった。
「ヤア、久シブリダネ」
「E氏……なのか?」
「驚イタダロウ? 寄ル年波ニハ勝テナクテネェ。スッカリコノ様サ」
E氏は肩をすくめておどけてみせる。その度に鳴るモーター音が痛々しい。
そう、E氏はロボットになっていた。
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