世界を半分手に入れた男の話。

6/7

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 が、国民感情は全く別なところにあった。 「我らが愛するW総統の為に! 国家の為に尽くすのは今だ!」 「そうだそうだ! 物資の不足が何だ! 精神で補うのだ!」 「閣下の為に!」 「総統閣下万歳!」  大熱狂であった。W氏のこれまでの国内における尽力が実を結んだ瞬間であった。国民は全て、国家の父であるW氏を崇拝していたし、その為に死ぬ事を厭わなかった。  W氏は頭を抱えた。  これだけ盛り上がっていれば、一気呵成にE氏の国を攻め落とせそうなものの、敵も然る者、猛然たる反撃を繰り出し続け、なかなか決着はつかなかった。  10年程の激戦の後、戦争はE氏とW氏によって和平を結ぶ形で終結した。  W氏は和平交渉の為に久々にE氏に会って、ぎょっとした。  自分は若返りの薬を飲んでいた為、精々目から生気が失われるくらいで済んでいたが、E氏はおよそE氏の形をしていなかった。 「ヤア、久シブリダネ」 「E氏……なのか?」 「驚イタダロウ? 寄ル年波ニハ勝テナクテネェ。スッカリコノ様サ」  E氏は肩をすくめておどけてみせる。その度に鳴るモーター音が痛々しい。  そう、E氏はロボットになっていた。     
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加