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翠色の地表より遥か上空、雲の上を小型輸送船が飛んでいる。
周りの景色は、黒い夜空と白い雲が対比的な色彩となり、 巨大な三日月が明るくそれらを照らしていた。
雲の隙間からは、翠色に照らされた地表が見え隠れしている。
『ハッチ、オープン!』
輸送船の後部ハッチが開く。ハッチに風音が鳴り響く。
開いたハッチの上を、一人立ち構える少年がいた。
やや高めの身長、細身の体型は俊敏さと鋭さを漂わせており、羽織った紺色のジャケットを風になびかせ、納めた鞘を腰に二振り携えている。
『やっこさんは見えたか~』
少年の耳元の通信機に無線が入る。
月光が少年の顔を照らす。透き通った肌、鋭く端正な顔立ち、眠気が残っている眼を細め雲を見下げる。髪の前半分は翠色であり、後ろ半分の黒い髪が縛った状態で風になびかせている。
「ああ見えた、いつでも乗り込める」
月光下の雲には影が写り、この輸送船とは別の影がうっすらと写る。
少年は身を沈める。その様はまるで獲物を定めた肉食獣のようであった。
『さて、今回の任務は簡単、中にいる密輸業者さんたちの制圧、そして"密輸品"の押収だ』
輸送船二隻の影が重なる。
『それなりに兵士はいそうだが、後方支援はいるかい?』
「簡単なんだろ、だったら俺一人で十分だ、ローガン達はいらない。そのぐらい分かるだろ?」
『ハーハッハ、言うねぇ!』
輸送船の影が重なった瞬間、少年は首筋に注射をうちこんだ。
「こちらツキカゲ、任務開始」
少年──ツキカゲはハッチを蹴って跳んだ。
『行ってらっしゃいな、ウチの看板傭兵さんの、ツキカゲよぉ!!』
金色に輝く月を背に、ツキカゲは翠色の射し込んだ雲に沈む。
その眼は、鮮やかな翠色に灯されて光っていた──
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