Chapter21 死霊術

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「でも・・・。  今回のトーナメント、一番の強敵は他にいる」  ノムの表情が一段と険しいものに変わる。  その理由は、私にも既にわかっている。  私も今日、その人物の戦いを見ているからだ。 「エレナが優勝するために、倒す必要のある人」 「セリス。  まさか、この数日であんなに魔力が強くなってたなんて。  というよりも・・・」 「あのときは本気ではなかった、ってこと、かも」 「セリスの体の中にある魔力が、より引き出されているのかもしれない」  昨日、本日の彼女の戦いをリプレイする。  3試合ともに、たったの1発の雷撃で終わってしまった。  そんな彼女は一瞬の笑みも見せず。  勝利の瞬間も、無表情を貫いていた。  彼女は何を思い、何を抱えているのだろうか。 「でも・・・。  このままだとセリス、危ない気がする。  無理してる気がするんだよね」 「かも、しれない」  改めて彼女に思いを馳せる。  あのときの、死んでしまったかのような彼女の瞳。  それが、強く脳内に焼きついている。 「エレナ、無茶したらだめだからね」 「わかってる」 「エレナの、わかってる、は信用できない。  エレナがセリスのこと、気になるのはわかるけど。  私は、エレナが・・・」 「まー、とにかく今日は宿に帰って明日の予行練習。  脳内でイメージトレーニングでもしようかな。  誰にあたってもいいようにさっ!」  ノムの言葉を途中で遮(さえぎ)り、明るく振舞う。  もう引き返すつもりはない。  誰が相手になろうとも。  全てを退ける。
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