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そんな心の内はひた隠し。
無知な少女を演出してみたりして。
「えっ?
はい、一応」
怖がっている風な態度で返す。
かつ同時に漏出する魔力を最小限に留める。
オーラセーブ。
ノムとずっと一緒にいたからか、私も彼女が得意なその技術が六部咲き程度に開花していたのだ。
おそらく彼は私の魔力的な実力を判断することはできないと思われる。
「読みづらいな」
ボソッと呟(つぶや)いたヴァン様。
すると、なぜか知らんが私にジワジワと近き。
目の前まで近寄ると、そこからさらに顔を近づけてきた。
何!?
近いって!
さっさとどっか行きなさいよ!
息もかかるほどの近距離からの凝視攻撃。
眉間のシワが目に入る。
反射的に視線を逸らせる。
苦い笑みが零れ出る。
やましいことはないのだが、取調べを受けている感覚。
その時間が5秒ほど続き。
私を釈放した彼は。
「ふっ」
そんな鋭く短い笑いを放った。
「どうですかー?
エレナちゃんっていうんですけど」
「少しは楽しめそうだそうだな」
「おおっ!」
ミーティアが手を叩き、驚嘆の声を上げる。
「勝ち残ったときは相手をしてやる。
まあ、勝ち残ったら、だがな」
そんな言葉を吐き捨てて、彼は闘技場を後にした。
その背中をホゲーっと見つめる。
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