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1撃。
2撃。
3撃。
4撃。
5撃。
6撃。
流れるような剣撃。
何発の斬撃が繰り出されたのか、その数を数えるだけで脳が溢れる。
リリアはこれを自身の刀で受け流す。
が、じわりじわりと後方に押しやられる。
それを振り払うように、封魔術の拡散魔法ダイアスイープを放つ。
クレストはこれを後ろにステップして回避した。
「クレスト、一方的な連撃!
しかしリリアも封魔術で応戦だーーー!」
「クレストの剣術に賞賛。
しかしリリアも負けていない」
このような剣でのやり合いが続けば、勝負の結果は明白だ。
それがわかっていたからこそ、リリアはここで大きく動く。
リリアの刀の切っ先から、封魔の魔力が拡散放出される。
その魔力は光を反射する雪の粒が作る霧。
相手のクレストを包み込み、そしてステージ全体をカバーするほどに広がった。
「リリア選手、魔術を発動。
ノムさん、これはいったい何でしょうか?」
「封魔術の広範囲拡散放出魔術、ダイアミスト。
封魔の魔力を霧のように拡散する。
しかし、魔力の感じからすると、威力がある攻撃ではない。
封魔防壁を強化していれば、ほぼ無害化できる。
霧の濃さからしても、視界を悪化させるほどのものでもない。
何か、別の意図がある。
クレストの光術の拡散が目的か。
あるいは・・・」
「なるほど」
「しかし、これはただのダイアミストではない。
魔力の空間滞在時間が長い。
通常は魔力を放出すると、すぐに消えて霧散してしまう。
これだけ長く空間中に滞在できるのは異例。
彼女の魔術の熟練具合が窺(うかが)い知れる。
これは同じく本選出場者のアリウスの得意な魔術『ナイトリキッド』に類似する。
しかしナイトリキッドのように、放出後に術者が自由自在に操作できるものではないと思われる」
「遠めで見てそこまで詳細がわかるノムさんも、すごいですけどね」
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