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席まで案内しようと側まで行くと、黒づくめのお兄さんが私に話しかけた。
「すみません。黒川というものですが、寧々さんに用事がありまして。今、いらっしゃいますか」
「はあ、寧々さんですか。いますよ、少しお待ち下さい」
思っても見なかったセリフに面食らいながらもそう言って頷く。2人を席まで案内した後、寧々さんを呼ぼうと厨房のドアを開けるとふわっと甘い匂いが鼻をくすぐった。
ううー、食べたい。いや、ダメだ、ここは我慢だすみれ!
必死に自分の食欲と闘いながら黒川さんとやらが尋ねてきた事を伝える。
「あら、もう来てくださったのかしら。早いわねえ。分かった、すぐ行くわ。…あ、それ食べててもいいわよ」
「やった!」
寧々さんの言葉に思わず声を上げると、寧々さんは可笑しそうに笑う。
3個までね、といって寧々さんは厨房を出ていった。
1人残された部屋で予想通り、バナナマフィンとご対面。…相変わらず寧々さんってば美味しそうなの作るなあ。
「いただきます!」
小さく手を合わせて早速1つ目に手を伸ばす。焼きあがったばかりのそれは熱かったけれど、今はそんな事気にならない。
夢中で口に含むと、バナナの優しい甘みが口の中で広がった。
うわぁ、ふわふわなのにしっとり、まったり…。クルミが香ばしい…。
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