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2.土井
帰省しないと言っていた船山。暇だったから、買い物のついでに部屋のインターホンを押してみた。
邪魔者が来たとでも言いたげな応対に少しムッとし、鍵を開けさせた。
ウィンウィンと静かなモーター音が響く。
部屋に閉じこもって、ひとりでこんな遊びをしてるのか、可愛い俺の後輩は…。
玄関から直接、有無を言わさずベッドの上に引き込まれた。その意図は理解できるから、俺も素直に船山に従う。
本当はこんな所を見られたくなんかなかった、と恥ずかしそうに俯く船山を見て、無性に此奴が可愛らしく見えてきた。
俺だって似たようなもんだ。確かに人に知らせたくはないけれど、こんな楽しみ方があるって事は十分に理解できる。
単調な動きを繰り返す先端部を見詰めながら、しばらく思考が停止する。毎日なにかと忙しいのだ。こんな風に無心に、動きに集中する時間だって必要だ。
連休だからと無理に予定を詰める奴の気が知れないなとほくそ笑む。なんでわざわざ他人の陣地に出向かなくてはいけないのか。
せっかく、ここには自分の城があるのに。
『ユーザーの声を活かして改良した』とパッケージに仰々しく掲げてあったように、従来のものより格段に滑らかな動き。まあ、今まで手を出したことがなかった俺には、比較のしようもないけれども。
船山、そんなにじっと見詰めていなくても、逃げたりしないぞ? だって、胃袋を鷲掴みにしてあるんだ、腹が減ったら戻ってくるよ。
「分かってますって。その、フラフラと戻ってくる所を見たい気がして、つい目で探しちゃうんですけど、可笑しいですよね?」
不安げな顔を見兼ねて、休みボケボケモードのセットしていない船山の頭を、ワシャワシャと撫で回してやった。
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