3.服部(終)

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 「ロボット掃除機のプログラム。最新の地雷除去の特許技術が転用されてるんだって。だから、こんなちっぽけな部屋くらい、隈無く掃いて回れるんだよ。充電の残りも計算尽くだろうなぁ。電源に近い玄関を最後に残す辺りがニクいね!」  で、船山が先に充電切れ、か。可愛いなあコイツ。  「船山の所、4月から残業が多かったからね。こんな休日も良いんじゃない?」  「ああ、そうかもな。起こして何か喰わせてやろうかね」  留守の後だから、自室の冷蔵庫の中身はアテにならないな、冷凍庫のピザでも焼くか。サラダは人参の千切りをレモン塩とオイルで和えたらいい。  献立に気を取られている間に、玄関から電子音が聞こえてきた。  「ぴ・ぴ・ぴ……」と鳴りながら、最短距離でドックに戻ってくるロボット掃除機。  船山は、これが見たかったんじゃなかったか? 起こしてやるか? と思っている間に、くるりんと向きを変え、奴はデッキに吸い込まれた。  「「あ~あ……」」  寝てるし! 船山寝てやがるし!肝心な時に此奴はっ!!  ああ~あ!  明日からまた通常営業。まだまだ定時では帰れない。  留守の間に掃除機の仕事は終わるから、しばらく今のピピピは船山の耳に届きそうにない。  可愛くて可哀想な後輩を労う晩飯、ご馳走してやろう。土産に買ったご当地限定ビールも出してやるか!  毎度の事ながら、俺たちは船山に甘過ぎるよなぁ~!     
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