第三章 絡みつく悪夢

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 自由シリア軍はアメリカやサウジアラビア、トルコから支援を集めている。政府を転覆させるのが目的なのは良いが、クルド人への攻撃も激しい。  イスラム国へも、アルカイダへもだ。ついでにロシアへも。  問題は二つ、司令部が百以上も乱立して統制を欠くことと、主力兵の供出元がムスリム同胞団と言われていて、やはりテロ指定集団なのだ。  一長一短ありすべてが噛み合わない、泥沼に足を踏み入れた結果があまりにも複雑で気が遠くなる。 「アメリカはアルビールを紹介出来ない。だがアメリカ軍がペシュメルガを紹介することは出来るだろう」  ペシュメルガ、クルド語で死に立ち向かう者を意味する。クルディスタン自治政府の事実上の軍隊だ。  アメリカ軍が武装供与を行い力を持った結果、イラクから半独立してしまった。イラクの肩を持たねばならないアメリカ政府は口利きなどして刺激をしてはならないが、アメリカ軍の言葉ならペシュメルガも比較的耳を貸しやすい。 「イーリヤが話をしたがっているとお伝えを」 「ふん、お前も大概無茶が好きだな。どうしてアメリカに産まれなかったのか……」 「来世にご期待下さい」  冗談を残し島は艦を去る。より困難に立ち向かう、一度でも失敗すると全てが終わると知りつつ安全策を容れない。 「前へ、より前へか」  外人部隊での言葉が脳裏を過った。  
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