第四章 道の先にある希望

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「閣下が連絡をする時は全てを話す時、それまでは心の片隅に置いておく。そう定め贖罪なさい、それで帳消しです」 「出過ぎるなよエーン」  低い声で態度を窘める、初めてだったその場の怒りでエーン大佐にそんなことを言うのは。  いついかなる時でも常に島の事を考えて行動してくれている彼に対してだ。  この一件で心が乱れているのがありありと解る、だからこそ重要だと島に報告を上げてきている。 「何と言われようと勧めを変えるつもりは御座いません。お気に召さなければどうぞお撃ち下さい」  腰に履いていた拳銃をデスクに置く。金属の塊が重い音をたてた。  進退をかけた言葉だ、それほどまでにエーン大佐は本気なのだ。  つい銃を見詰め、そして視線をあげる。そこで知る、迷いが何をもたらしているかを。 「…………くそっ! この愚か者が!」  ーーあれだけ迷いを見せるなと言い聞かせているというのに、なんて無様なんだ!  拳をデスクに思い切り叩き付け自らの言動を悔いる。  腹心中の腹心にそこまで言わせている己が情けなくて怒りが爆発する。  こうまで弱点になり得る人物が、もし事件で喪われでもしたら迷惑するのは現場だ。 「我がセニャールのお言葉です、前を向いて歩けと」  いつか迎える希望ある未来の為に。
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