第六章 大国の狭間で

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 想定外の手札にオルテガが必死に頭を働かせ最善策を練る。  アメリカを利することになるようにも見えるが、島の言うようにロシアが影響力を持っているイスラエルが何かしらの力を得るなら一概に否定を出来ない。  ではシリア内のイスラエル派は何をどうするつもりなのか。  答えが見つからないまま島が先を述べる。 「政府軍からの武器流出を未然に防ぎ、テロリスト集団と対峙する力を政権に認めさせます。イスラエルの代弁者としての役割を持ち、国同士の交戦を避ける緩衝材として置くつもりでもあります」 「なるほどな……」  それならばイスラエルもシリア政権が倒れるのを促進することもなくなり、自国の生存性を上げることになる。  国家の安定に資するならばシリアにとっても悪くはない。  問題は誰がどうやってそれを成し遂げるかだ。 「自分はわがままなので全てを諦められません、部下には迷惑を掛けてばかりです」  ようやく苦笑いを見せる。 「若いうちはそれで良い。未来は常に希望で満ち溢れているものだよ」  その頃、自分はどうだったろうかとオルテガは革命時代を思い起こすのであった。
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