第八章 マヤーディーン攻防戦

2/24
1459人が本棚に入れています
本棚に追加
/914ページ
◇  砂地にベタ置きされた毛布の上で兵が寝転がっている。屋根と呼べるようなものが一応あった、茶色のテントが幾つも並んで設置されているが、綺麗に並べられてはいない。  練度が高い部隊は軸のパイプが一直線に並ぶように建てるらしいが、ここではそのような指示までは出されていなかった。  理由があるとしたら、寝泊り出来れば充分なことと、わざわざ練度を誇示することもないと指揮官が考えたから。 「ま、ブッフバルトが居たらこうはならんだろうがね」  ロマノフスキー准将が、今は別の場所で活躍しているだろう自身の副官の発言を想像して独り言ちた。  任せておけば間違いなく、一糸乱れぬ駐屯地を据える。  都市の仕上がりを見ても納得の生真面目さが証明されていた、砂漠に来てもそれは変わらないだろう。  暑さのせいで昼間に少し寝ているので、深夜になっても寝付けずに書類の整理をしていた。  とは言え装甲バスの後部を執務室に利用しているから、外で寝転がっている兵と状況はさほど変わらない。   「黙って与えられた仕事をしているだけでは俺の存在意義はあってないようなものだ」
/914ページ

最初のコメントを投稿しよう!