第十章 アレッポ攻囲戦

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 第二次世界大戦当時の、ドイツ対ソヴィエト連邦の凄惨な攻防が行われた事例を持ち出す。都市に籠る軍が全てをなげうち、文字通り死守を行った。  食糧を制限し、死肉を喰らい、棒きれや石すらも武器にして戦い、ほぼ三年もの間折れずに耐えきった。その代償はあまりにも大きく、三人に一人が死亡したと言われている。  戦死者が一パーセントも出ると上へ下への大騒ぎになる中、どれだけの被害があったかが想像できるだろう。 「問題が山の様にあるが、現場組としてはどれが敵で、どれが味方かだけは知っておきたいな」  ――味方を装う敵が居ると大惨事だからな。  この世で一番厄介な敵は、敵と認識出来ないものだ。これは古今東西を問わずに、時代も問わない真理でもある。  同席している複数の下士官が首を縦に振る。無論識別の方法に絶対など無い。かといって諦めることは許されない。  小さな部隊ならば顔見知りで構成されているが、合同の大部隊になるとどうにもならない。そんな単純なことだけではなく、スパイの存在や裏切りも含めての懸念だ。
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