第十一章 地中海からの使者

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 誰かと言うのをぼかして名乗る。オスマン司令官も本当のことを言ってもどうせ最初は信じようとしないので、これといって指摘もしてこない。  どちらからともなく座ると正面を向いた。 「ユーフラテス同盟のスポンサーだと聞いているが、YPGにも支援を?」  そうであれとわざわざ時間を割いたのを前面に出して来る。ここは日本ではない、主義主張や要望はしっかりと口に出すのだ。 「お望みならば。YPGはイスラム国の放逐を望み、アサド政権を承認する?」  ――政治的方向性は簡単に替えられない、本題はその先だよ。  上層部同士の会話は一言ひとことが戦いだ。失言は多くに迷惑が掛かってしまう。 「クルド人の生存権を確立する。イスラム国が我等の居住地を脅かしている限りは、武器を手にして戦うだろう」  ここではないどこかへ行ってしまえばあとは知らない、そうともとれる。彼らは集団であって国ではない、他所へ行ってまで戦うような責務を誰かに負ってなどいない。  戦う為の武器はアメリカ国防総省が支援している。だがアメリカは別の組織にも支援を与えていて、その反政府軍とYPGが戦うことがあった。
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