第十一章 地中海からの使者

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「こちらオルダ大尉、目標を発見しました!」  山の下から黒服の兵が駆けのぼって来ると、島とサルミエ少佐を囲んで外側を向く。エーン大佐の直下にある、プレトリアス親衛隊だ。  猛ダッシュで眼前までやって来ると「閣下、よくぞご無事で!」黒い顔に白い歯を見せて安堵の表情を浮かべる。 「オルダ大尉ご苦労だ。流石に俺も少し疲れた、さっさと帰るとしよう」 「ヤ!」  共に下山、眼下の尾根には武装車両の一団があり、エーン大佐が待っていた。 「お前なら来てくれると思ってたよ」 「遅くなり申し訳ございませんでした」 「なに、収穫もあったからな。なあサルミエ」  島が投げかけると「はい」短くそれだけ答える。詮索するのは後回しにし、エーン大佐は乗車を促し一刻も早くこの場を離れるようにと部隊を動かした。  ――しかし、ヤーズッカーか、こいつは口外厳禁だな。あれは母語の響きだった、どうして日本人がこんなところでスナイパーやってるのやら。まあ、それを言っちゃ俺も同じか。  腕組をして後部座席に座るとじっと動かず黙る。幾つもの状況を考えてみたものの、納得いく回答はついに浮かぶことが無かった。
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