第十二章 マハラジャの気まぐれ

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 制圧射撃が加えられるとイスラム国兵は頭を下げられるだけさげて数秒を凌ぐ。モスクから死体を担いだマリーを先頭にして、十二人が飛び出す。  通りの南側からもYPJが制圧射撃を加える。前後から猛攻撃を受けて、遮蔽物の下でじっとしているしかないやつを目の端に収め、ひた走った。  YPJの応戦部隊が構築しているバリケードが一部取り払われる。全員が逃げ込むと再度封鎖された。  肩から女性の死体を下ろすとYPJの歓声が上がる。仲間が凌辱されていた、それを救ってくれた者が居たと。 「ILBの色男、あたしを抱いて!」 「籠って出てこないYPGのインポ野郎はこいつを見習え!」 「司令官に報告をあげな!」  ドラミニ軍曹と目を合わせて肩を竦める。何ともコメントしづらい声が多いこと。  陣地の奥からギラヴジン司令官とジンビラ副官、そして褐色の肌の部隊先任下士官が出て来ると、マリーはつい「あ……」なさけない声を漏らしてしまった。  後日、それもニ十四時間でモスクに空輸で補給が行われたのは言うまでもない。その際には、フランスの輸送機にアメリカ軍の護衛戦闘機が寄り添い上空を通過。驚くべきことは、ロシア軍からの誰何が一切なかったことだった。
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