第十五章 クァトロの暗躍

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 何とも腑に落ちないが、現実は動かしようも無い。利用されたのか、それとも出し抜かれただけなのか。  この場に待機していても事態は好転しないだろう、速やかに拠点に帰還するのが最善策。いつもならばマリーは迷いもせずにそうしていた、だが何かが引っ掛かる。 「ムーア、先に出て行った車両に乗っていた奴らの顔を見たか?」  姿を見たのは彼だけ、少しでも情報を得ようと質問する。あまり自信なさそうにだが答える。 「白っぽい布を巻いて口元を隠してました。火災の灯りだけなので断言はできませんが、このあたりの人種より白い肌をしていたよう見えました」  シリア人の多くは茶色を濃くしたような顔をしている、日差しのせいで焼けたようになっている理由も含みで。一方で白人などはそもそもが日焼けしても赤くなりはしても、茶色や黒ということにはならない。  クルド人はどうかといと、やはり茶色に近い肌をしている。距離があったので不正確だろうが、何かしらのヒントがあるような気がした。 「どこかの民兵か、それとも傭兵? いずれにしても俺達の情報網外のやつらが近くにいるのは確かだ」  ――クァトロの外側のな。それにしても射撃の腕前は一級品か。  火災が鎮火していき落ち着きを取り戻し始めたのでマンピジュへと引き上げることにした。不都合については取り敢えず今は気づかないふりをして。
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