第十七章 ラッカの包囲戦

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 安定を取り戻したのも束の間、数の暴力に何度も押されていつしか守るのも精一杯、どこか一カ所が崩れたら全てが壊れるのではないかと不安が湧いてきた。 「アッラーアクバル! アッラーアクバル!」  神の名を口にして繰り返し突撃をしてくるイスラム国兵がついに防衛線を突破した。廊下で銃撃戦が繰り広げられる事態に「慌てるな、侵入した敵を全滅させろ!」エルドアン大尉が対処を叫ぶ。  橋頭保を確保した敵が後続を送り込んで来ると、完全に追い出すことが出来ずに玄関ホールの攻防戦が始まってしまった。  ――いかん、これ以上は防ぎきれない!  拠点を放棄して離脱することを考えなければならない、マリー中佐が敗北を確信する。これがクァトロ戦闘団ならばこうはならなかった、詮無き悔恨を抱えて歯を食いしばった。  連続する迫撃砲の曲射、警察署の屋上にも弾着してぽろぽろと破片が天井から降って来る。駐車場に居た敵兵が大被害を受けた、遮蔽が無い場所で砲弾の破片を受けたのだから最悪と言える。  思っていた以上に砲撃は続き、止んだら今度は銃弾が斜めに飛んでいった。北西からの攻撃、駐車所を横切り南部へと。即ちイスラム国兵への銃撃だった。
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