第十七章 ラッカの包囲戦

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「YPJギラヴジン分隊だよ! 腰抜け共をブチのめしな!」  勢いよく前進してきたのは西部ではなく北部端に居たはずのYPJの部隊。反撃を恐れることなく大胆に地歩を得ると切り込んでゆく。 「警察署にILBを確認! 色男に先を越されたようだね!」 「おいおい、あいつら東端だったんじゃないのかい」 「知るか、現実を優先だ。挟撃するよ!」  みるみるうちに警察署を包囲していたイスラム国兵を蹴散らすと、反時計回りで真南にまで進んだ。包囲の圧迫が消えると兵力を北と東に集中させる。 「勇猛果敢な女性たちだな!」  ――半数程だけのようだが、あの旺盛な士気は凄いな!  気おされそうになるような迫力に苦笑してしまった。罵詈雑言も山のように耳に入るし、ILBへのからかいも多かった。 「しかしあいつが少佐かい、こうなるなら無理矢理喰っときゃよかったね!」 「お姉さんと遊ぼうか!」 「大サービスしとくよ、ははははは」  ムーア上級曹長と目を合わせて困った表情を浮かべる。もし戦闘が落ち付いていたら別の危険が産まれそうだったから。  近くで頑張っていたイスラム国兵が徐々に北東へと退いていくと、西からタリハール・アル=シャームが進出してきた。今回の立役者ということになってはいるが、兵らの表情は何故か面白くなさそうだった。
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