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戦場で一つの観測が取りざたされていた、それは今回も黒い暴風が現れるのではないか、ということだ。
アイン=ラサで猛威を振るった後、ダイルアッザウルで激戦を繰り広げた謎の部隊。溶けてなくなったのでなければ、これだけの大戦に参加しないはずがないと。そして、シリア軍はじっと復讐の機会を窺っているのではないかとも。
多くが考えるように、アル=イフワーン・アル=ヌジュームの皮をかぶったクァトロはラッカ近郊に伏せていた。司令代理はブッフバルト少佐、命令があればいつでも参戦できる構えで南西の砂漠地帯で空を見上げている。
祖国の防衛の為でもないのに、彼らは命を懸けることを厭わない。たった一人の意志を尊重するだけ、多くの現代人には理解不能だろうが関係なかった。
「少佐、出撃命令はまだでしょうか」
胸板が妙に厚く、背は百六十センチもない南米生まれのビダ先任上級曹長が催促した。すぐ傍で激戦が繰り広げられ、己の上官であるマリー中佐が戦っているのに、自分は待機というのが落ち付かない。
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