第二章 中東紛争参戦

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 タイヤで激しく砂を巻き上げて軽車両がエンジンを唸らせながらワジを進む。  車載の機銃が遠くに見える黒服の戦闘員をなぎ倒す。なるほど今回に限っては黒のクァトロ戦闘服でなくて良かったかも知れない。 「全軍総攻撃だ!」  戦機を感じ取ったマリー中佐が全力攻撃を下命。  左右の陰からも車両が姿を現して機銃手がようやくの出番に弾丸を大放出した。  三方から攻撃を受け、精鋭が力尽きているイスラム国兵は、北側に敵がいないと見るとついに一人、また一人と北へ逃げ出していく。 「抵抗する敵だけを狙え!」  目的は敵の全滅であって殲滅ではない、戦闘力を奪えばそれでよい。士気を喪失した者は対象外だ。 「アッラーアクバル!」  神を讃えて死を覚悟した特攻を仕掛けて来る者が続出する。 「無理に交戦するな、守備重視でやり過ごせ!」  決死の攻撃と真面目にやり合う必要はどこにも無い。  指揮官が最前線にいるからこそ素早い対応が命令される。  自殺志願者があらかた居なくなったところで「敵を掃討しろ!」新たな命令が下った。  無線を切って大きく息を吐く。上手く行くかどうか、今の今まで解らなった。 「何とか勝てた、方々に迷惑を掛けずに済んだか……」  数年前、きっと島が通ったであろう道を、マリーも今通過した。
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