第三章 絡みつく悪夢

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◇ 「閣下、戦闘団より速報が御座います」  グロック准将がメモを片手に報告を上げる。どうしてか副官より素早く知り得ていた。  ――合流して以来無為に過ごしていなかったというのは認めるよ。  表情こそ変えないが、サルミエ少佐が情報収集の順路を見直そうと思考しているのが伝わって来る。  それがグロック准将の得意な手口だと島は理解していた。 「アルジャラー市を攻撃するシリアユーフラテス運動を支援し、同市からイスラム国駐留隊を排除しました」  ユーフラテス川の東西を占領してシリア北東部へと勢力を広げていったイスラム国の尻尾を切り取った形になる。 「そうか、まずは半歩多めに進むことが出来たわけだ」  二回行動にしてはやや少ないが、あの軽装では仕方ないことだと頷く。  が、そこで異変に感付く。  ――まてよ、これはグロックの罠だ。  今までの経験が警鐘を鳴らした、久しぶりのこの感覚につい両の目が大きく開かれる。 「サルミエ少佐、アルジャラー支援を行った部隊詳細を上げろ」  名誉挽回の機会を与えつつ己への罠を回避した。
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