第三章 絡みつく悪夢

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 ――結局は自分で考えろというわけか、嬉しくて涙が出るね。  二人の教官が島を立派な司令官にするためにと次々と問題を出して来るではないか。  ――第三勢力を持ち出すよりは信憑性があるか、命名は苦手だ。  アラビア語で何と言ったかを思い出すのに少しだけ時間が掛かった。 「シャームのオアシスで、シャムワッハがその手柄を誇るというのはどうだ」  シャームよりシャムのほうが耳に馴染むが、タイのシャムではなくアラビア語で幅広いシリア周辺の地域を差している。  首都であるダマスカスの別名でもあるが、曖昧な部分をこそ利用価値ありと見ていた。 「エーン大佐、アラビア語を解してシリアまたは周辺国籍、集団を指導可能な人物を抱えているか?」  人材バンクであるエーン大佐に直接グロック准将が尋ねる。逆に言えばその手駒が無いのを意味していた。 「中隊、または村程度までなら指導可能な者が複数名有ります」  その場に在って一言も発さなかったが、指名され初めて喋った。  期待していた回答は充分な内容で、また彼に頼らねばならない事実が圧し掛かる。
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