第三章 絡みつく悪夢

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「エーン、済まんがまた頼めるだろうか」  控えめに島がエーン大佐にお願いをする。  ニカラグア内戦を始める時からずっと、コンゴでもソマリアでもルワンダでも、いつも必ずなので心苦しい。 「勿論です閣下、お任せください。ですが一つだけ自分からもお願いが御座います」 「なんだろう」  エーン大佐がお願いとは珍しい、出来ることなら叶えてやりたいと真剣に耳を傾ける。 「かつてのロマノフスキー少佐が仰いました『ボスは頼むものではなく命令するものです』と、どうぞ人を揃えろとご命令下さい!」  島がイエメンに単身乗り込んだ際に胸に突き刺さった言葉を思い出す。  ウマル中佐もその場に居合わせていたものだ。  ――ああそうだった、こいつらは皆そういう奴らだった。だからこそ命令なんてしたくないんだが、そう求められるのならそうしよう。  椅子から立ってエーン大佐だけを見る。 「命令だ、エーン、介入に必要なあらゆる人材を用意しろ!」 「ヤ! セニャール!」  自分を頼ってくれて嬉しい、それがエーン大佐の率直な今の心境である。
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