第三章 絡みつく悪夢

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 声を出す準備はこれで整うだろう、大切なのはもう一つある。  司令官の椅子に座りなおして今度はデスクの前に立っている参謀長に顔を向けた。 「俺達はアメリカが直接支援しない相手と近しくなるのが望ましい。状況が許すならば敵対する勢力ほどな」  今度こそは参謀らに仕事を割り振る心づもりで方針を示す。  イラク政府はアメリカを完全に受け入れている。前政権を転覆させて据えた集団だ、それは当たり前ということになっている、少なくとも今や近い未来までは。 「イスラム戦線の穏健派に交渉を持ちかけてみましょう。女性の解放ならば話に乗るかも知れません」  言葉は悪いかもしれないが、彼女らを話の切っ掛けにして接触を図る。  結果として数日家に戻るのは遅れるだろうが、そこは我慢して貰いたいものだ。 「ハズム運動を構成していた、イラク・ファールーク大隊は遊撃自警団として活動をしております」  ぱっと名前が出て来るのは滞在が長いからだろう、ハウプトマン大佐の進言を採る。 「参謀長に命じる、作戦案を提出しろ」 「ダコール」 「二時間後に集合だ、解散」  サルミエ少佐にはマリー中佐への回答期限をつけて保留、現状維持を命令させた。
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