第三章 絡みつく悪夢

11/52
前へ
/914ページ
次へ
「俺はお前が真に困難に遭っていた時、手を差し伸べることが出来なかった。こんなことでは何の返礼にもなりはしない」  ソマリアでの出来事をさしているのだろう、表情が曇る。  ――レティアに大分刺されたようだな、逆に申し訳なくなる。  サルミエ少佐は表情を変えない、ここのところポーカーフェイスが板についてきた。 「今こうやって再会出来ていることだけで充分です」  座れ座れと椅子を勧められる。副官は後ろで起立したまま、二人の中将が腰かけた。 「シリアへの橋頭保を得たようで何よりだ」  アブー・カマール市の件、アメリカが支援した民兵団はあっさりと撃退されたと頭を横に振る。 「うちの若いのが命を張った結果です、自分の功績ではありません」 「マリー中佐だったな、あれは良い指揮官だ。海兵遠征隊を任せられると信じている。もっとも中将になら俺の後をそっくり任せられるがな」  相も変わらず島を引き抜こうという気は変わらないらしい。  ――そうやって買いかぶられてもガッカリされるのがオチだよ。
/914ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1460人が本棚に入れています
本棚に追加