第十三章 緑に星一つ、黒の部隊

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第十三章 緑に星一つ、黒の部隊

◇  撃墜されて司令部に戻った後数日、執務室にグロック准将が姿を現す。手には数枚の書類を携え、黒の軍服を着ている身のこなしは、齢五十を目前にしているとは思えなかった。  島が不在の際には司令官席に腰を下ろし、アル=イフワーン・アル=ヌジュームだけでなく、クァトロ全軍の指揮を執る。共に並んでいればどちらが主将か間違える者も多いだろうことは、島が認めていた。  軍靴を鳴らして眼前で立ち止まると手のひらを外側にして敬礼する。外人部隊を出て後このスタイルを変えたことは無いし、そんなことを考えたこともない。 「報告いたします。アレッポでの戦闘が収束、政府軍並びにクルド人勢力の勝利で推移しております」  出張とほぼ同時に起こった大事。現在進行形で戦争が行われていたが、各軍の奮戦で組織的な戦闘は終わりを告げたようだ。  市街地北西部が新たに政府軍の占領を受け、統治を回復した。占領ではなく奪還というのが正しいだろうか。  市内の中央を流れる河の北東、YPGとYPJの軍がイスラム国兵を駆逐した。ひと悶着あったのも聞き及んでいる、YPJを囮にして戦闘をしたというのを。
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