第十七章 ラッカの包囲戦

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第十七章 ラッカの包囲戦

◇  テレビニュースを目にして小さく微笑む島。ことの異常さの裏側を感じた。  ――なるほどな、こいつは兄弟のしわざか、ワリーフが申し訳なさそうにしている顔が浮かぶよ。  シリア政府軍が失敗を喧伝されるわけには行かない、その為には当事者の要求を丸呑みせざるを得ない。或いはより軽い被害で済ますように事実を歪曲するのが常だ。  ところが思いがけない申し出、即ち話を合わせて互いの功績にしてしまおうと打診される。現地のシリア軍としては否を返答する道は無かった、責任を丸被りして司令官が墓地へ行くというなら別だったが。 「ボス、フォートスターからです」  サルミエ少佐が携帯電話片手に部屋にやって来る。目の前のデスクの電話を使わないのは発信元の都合だろう。  手を伸ばして受け取ると耳にあてる。 「閣下、留守司令のシュトラウスです」  クァトロの留守部隊は現在シュトラウス少佐を頂点にして待機している。負傷による療養中の者、訓練中の新兵、それと契約満了寸前で継続を検討中の者が居た。
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