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ある日の移動教室の日。私が教室を出ようと急いでいると、教室へ入ってきた男子とぶつかった。
京君だった。
「ごめん、えーっと……名前……」
「春田です」
「あ、そうだった、春田さん。ごめん。怪我とかしてない?」
「大丈夫です」
「そう。なら良かった」
京君はよっぽど急いでいたのか、その後授業道具を持って教室から出て行った。
私はしばらくぼんやりとしていた。
ショックだったのだ。
京君は同じクラスの私の名前を覚えていなかった。
そのとき思った。京君が私の名前を覚えてないのは、私があまりに地味で目立たない半分の女だからに違いないと。
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