1・条件

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 今日、5年ほど付き合っている彼氏の卓也にプロポーズされた。  海沿いをドライブして車を停めた時、港町の夜景を見ながら「宝石箱の中にダイヤを散りばめているみたい」と私が呟くと、ビロードのケースに入った大きなダイヤモンドが飾られたプラチナのリングを差し出されて……。  卓也は私より8歳年上の33歳だけど、会社をいくつも経営している所謂青年実業家だ。平凡な私には勿体ないくらいの彼氏で、長身で端正な顔立ち、マメな性格に優しい気遣いのある素敵な人だから、ずっと心待ちにしていたプロポーズだった。  有頂天になって即答でOKを出そうとしたその時、彼が呆気にとられるような告白をしてきた。 「だけど、この結婚には条件があるんだ」 「えっ? 条件……?」  なんだろう? 仕事の手伝いをするとか……?  実家は九州だし次男だから、親との同居は無いだろう。  それとも、朝食は絶対にご飯とみそ汁がいい、とかそんなことだったら良いのだけど。  私は頭の中でぐるぐると思考が廻っていたけど、卓也の話は予想も出来ないような内容だった。 「実は俺……ずっと言えなかったんだけど、真妃と付き合う3年くらい前から他の人とも付き合っていたんだ」 「えっ!?」  私は目の前が真っ白になって言葉を失った。 「その人は真妃より長く付き合っていて真妃より年上だから、結婚を迫られてね。で、思ったんだ。その人と結婚するなら真妃とも結婚しようって」 「……え?」  今、「真妃と」ではなく「真妃とも」と言った気がする……。
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