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「それって……その人とも結婚するってこと?」
「うん、そう。さっき言った条件は“半分婚”なんだ。」
卓也は負い目とか背徳感とか、そんなものは微塵も感じていないようで、何か決意をしているような瞳で私を真っ直ぐと見つめている。
私は卓也の愛情はずっと感じて来たし、そんな卓也を手放したくはなかった。例え裏切られていたと知っても、だったらもういい! と言い捨てることが出来なかったのだ。
だけど、半分婚って……!?
「今まで、真妃とは週の後半に会っていただろう?」
そう。卓也は週の前半は仕事が忙しくて、私とは木、金の夜と土曜日には1日会っていた……。
「まさか前半は……?」
「うん、その人と日曜日から火曜日まで3日間会っていて、水曜日だけ自分のマンションに帰っていたんだ」
そう言うと、卓也は蓋を開けて差し出していたままだった指輪のケースを私に握らせた。
「結婚しても、同じように過ごしたいと思っている。今の俺のマンションもそのままにしておいて、水曜日にはそこへ帰る」
私は手触りの良いビロードのケースを掌に乗せたまま、どうすることも出来なかった。
「だ……だけど、日本は一夫一妻制で、重婚は認めていないよ」
そんな言葉を発してしまう自分が情けなくて泣きたかった。
自分だけを愛していないなら、結婚なんて出来ない!
そう言い切ることが出来ないなんて……。
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