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「知っているよ。だから、籍は真妃と入れる。それがせめてもの真妃への愛情だと思って欲しい」
「も……もう一人の人は……?」
「海外で結婚式を挙げて、婚姻の誓いを立てるつもりだ。でも日本では真妃だけが正式な妻だし、もう一人の人は子どもをいらないと言っているから、子どもも真妃とだけ持つ」
今はいらないと言っても、生まれるかもしれない。そうなったら、本当に複雑になってしまう……。
私の不安に気づいたのか、卓也は目を細めて愛しそうな眼差しで私を見た。
「いらないというか……その人は産めないんだ。だから、本当に家庭を持つのは真妃とだけだよ。でも、その人のことも愛していて手放せないんだ」
そんな瞳でそんな言葉を聞くのは胸が張り裂けそうで、堪えきれずに涙がこぼれた。卓也は私のことを優しく抱き寄せ、私の頭を撫でながら、優しい口調で残酷な話を続ける。
「この話は今日だけにするつもりだ。今後、真妃に半分婚の話は一切しない。だから真妃も暗黙の了解として、結婚生活を送って欲しいんだ」
「…………すぐに答えは出せない」
ずっと待っていたプロポーズだったし、卓也と離れるなんて考えられなかったけど、私はそう言うしか無かった。
「そっか。だけど、真妃にとっても悪い話じゃないよ。俺は自分が会社を経営しているだけじゃなくて、実家の親からの生前贈与でかなりの資産はあるから、結婚したら経済的に裕福な人生を送れる。週の半分は俺とは会えなくても、その時間を自分の好きなように過ごせるんだ。週の後半は俺と恋人気分で会い続けることが出来る。最高な結婚生活じゃないか?」
まるで私が断ることは有り得ないような口調で卓也が言う。
「わ、分からないよ。私は……卓也が自分だけを愛してくれていると思っていたから」
「何も変わらないよ。目の前にいる俺は真妃だけを愛しているんだ。真妃は浮気さえしなければ、何をしていてもいいんだよ」
浮気さえしなければ……?
自分は浮気しているのに、私にはするなと言うなんて……。
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