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あいてててててえええ!え?え?
激しい痛みに襲われて、自分は眼を瞬いた。と言っても、現在この目は一つしかなく、端から見たら、ウインクしているように見えるかもしれない。とか、そんな馬鹿らしい考えしか思い浮かばなくなったのは、脳も二分割されているからだろうか。
そして、それは今も「最中」である。
こんなに痛いのに、文句も言えないのは、口が上手い事形成されていないためだ。横に引き裂かれている途中で、顎の骨がめりめり、めりめり、と恐ろしげな音を上げて、崩れている・・・もとい、成形途中だ。
くっそ!!ちょー簡単って言ったじゃん、嘘つきめ!!
と、恨みを込めて視線を送った先には、自分をこんな目に合わせた張本人、「カシューナッツ」が、悠々と煙草を吹かしながらこちらを眺めている。
この男の名前はもちろん本名ではない。本人曰く、一日毎に名前を替えなければならない呪いに掛かったそうで、毎日人に会う度、違う名前を名乗ってくる、という面倒な奴なのだ。
「おいっ!!いつ終わるんだよ、これっ。さっさと終わらせろよ、このイカサマ野郎が!」
口が出来上がった所で、早速文句を垂れてみる。あ、声はいつも通りだ。
「仕方ない・・・。強制分割させるか」
カシューはそう呟いて、赤い革張りの椅子から立ち上がると、手に刃渡り600mmのマグロ用包丁を手に持った。
「ちょ、ちょま、ま、待って?やっぱ自然分割で!自然で、自然が良いよ何事も!!」
心底震え上がった自分を、カシューは見下したような目で見て、ふん、と鼻を鳴らした。
なんだ、その態度は、と今度は心の中で悪態を吐き始める。下手なことを言うと、本当にやりかねないからな・・・。
ぼくはその時、本当に何気なく、その足元を見て、そして、言葉を失った。
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