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せかせかと準備を整え、車を出した。
稔は一応、後部座席へと座る。
外から見られても大丈夫なように車窓はスモークで覆われているが、万が一だ。
というか、車の中でもおねだりしてくる稔に配慮して、こんな怪しげな車になったのだが。
「あれ。八代じゃないか」
「あ、ほんとだ」
前を歩くやたら派手な青年は、校内でも有名な生徒の1人、八代 朋也(やしろ ともや)だ。金の髪をガチガチにワックスで固めた、いかにもな髪型。制服の着こなしも褒められたものではないが、中身は普通の気の良い青年だということを俺も稔も知っている。
「じゃあ、ここでいいよ」
どうやら、八代と登校するらしい。
俺は他に人気がないことを確認すると、車を停車させた。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
ちゅ、と小さく車内に響いた音は一瞬。
俺は、稔が車を降りたことを確認するとすぐにその場を後にした。
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