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比較対象がそもそもおかしいのだが、わが子のように可愛がっているこの子に勝るものはない。
もともと俺は子供が好きだ。
今は大学に通っているけれど、あと数年もすれば教職員になる予定である。
俺は稔の可愛らしい質問に当たり前だが即答だ。
すると、俺の答えに稔の顔は太陽のように輝きだす。
この顔が見れるならいくらでも嘘をつける。
もちろん今回のは嘘偽りない俺の本音だが。
「ぼくも、はおがいちばんすき!」
屈んだ俺の首に手を回して、すりすりと頬をよせる。
解放されたカエルがぴょんと跳ねた。
さっきまでカエルを触っていた手で俺の肌にぺたぺたと触れられるのは、心地いいものではないけれど、彼の笑顔を見たらそんなことどうでもよくなった。
ふわふわの髪を撫でてやれば、きゃっきゃと嬉しそうに笑う。
「……俺も好きだよ」
こんなこと言ってくれるのは今のうちだけ。
今だけはこの甘く優しい時間に浸っていたいと思った。
はぁ……なに感傷的になってんだよ、俺。
まだ見ぬ未来に怯える生活は明日も続く。
どうか1日でも長くその日が来ないことを願うばかりだ。
「はお、なくの?」
「……え?」
「かなしそう」
暗く沈んだ彼の目が、俺の顔をのぞき込んだ。
どうやら、心配させてしまったらしい。
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