愛しのわが子

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「……あはは、大丈夫だよ。ごめん」 あからさまに態度に出してるつもりはなかったけれど、稔は俺のことになると敏い。5年間俺が親代わりを務めてきて、俺が稔のことなら何でも分かるように、逆もまた然りなのだ。 すぐさま取り繕って、頭を撫でてやれば、未だ不安そうな稔と目が合う。 俺は本当にダメな親だ。 まだ幼い自分の息子に、こんな顔させるんだから。 「ほんとに大丈夫だよ。ほら、稔。おやつにしよう!」 つくづく大人は卑怯だと思う。 餌で釣って、都合のいいように言いくるめる。 稔の好物のホイップたっぷりのプリンがまだ冷蔵庫に残っていたはずだ。 俺は立ち上がって、尻についた砂埃を払うと、彼の小さな手を掴んだ。 けれど、稔はその場からじっと動かないまま、何かを考え込んでいた。 「……稔?」 ……こういうところは頑固なんだよなぁ。 納得いかないことや、気になることがあると、稔はこうなる。 そういう時は、彼の意見を聞いてあげなければならない。 「……はお」 「なに?」 もう一度身をかがめて、同じ目線の高さになる。 水晶みたいに澄んだ瞳が俺を見ていた。
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