明日はきっと、今日よりも、

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「……めて……」 蚊の鳴くようなか細い声が耳を掠めた気がした。 ハバはぐるりと首を回してみる。 ――誰もいない。気のせいだろうか。 「やめてください……」 一歩踏み出したと同時に確かに届いた。 大通りから伸びた細い路地に複数の人影がある。 どうやら声の主はそこにいる少女のようだ。 小柄な見た目からして中学生くらいだろうか。 高い位置で括られたスポーティーなポニーテールが印象的だ。 白のワンピースとその上を横断するショルダーバッグは、薄暗い路地によく映える。 そして彼女の前にはスーツ姿の若い男が一人、その横に似た格好の男がもう一人立ちはだかっている。 「戻ってもらわなきゃ困りますよ。そういう約束なんですから」 「行きません、通してください」 少女は頼りない声ながらも拒否の言葉で突っぱねる。 「いい加減つべこべ言わずに……!!」 「きゃっ!!」 一人の男が少女の腕を掴んだ。 少女は前にバランスを崩しその拍子に地面に倒れた。 「何やってんだよ、顔に傷でもついたら……」 「あ、ああ」 動揺する男達を制するように、 「おい大丈夫か?」 そう少女に声を掛けたのはハバだ。
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