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「しょうもなき庶民よ。存分に足掻くがいい」
世界は平和だった。あの男が現れるまでは…
その日も、とても穏やかな日だった。
朝がやって来て、目を覚まし、キッチンにいる母が作る料理の匂いがいつも通り美味しそうで…父親は朝早くから家を出て、村の外れにある大きな工場で働いていた。
母が作ったご飯を食べ、学校に向かう準備をする。歯を磨いて制服に着替え、学校指定の茶色いカバンを持ち、家を出るために靴を履く。
玄関先で母の作った弁当を渡され、気をつけるのよ。なんて、毎朝母に言われる言葉に軽く返事を返す。何も変わらないはずの家からでて、目指す場所は学校…
だったはずなのに。
気がつくと真っ白い天井と、真っ白い壁に囲まれていた。
広いのか狭いのかあまりわからない、白以外何もない。そんな空間に、突然黒い穴が現れ、1人の男が現れた。
「はじめまして、庶民」
圧倒的な存在感。
その言葉がぴったりと当てはまるような、黒い髪を後ろに流し、真っ黒なスーツを着た男。身長は2メートルは軽く超えているだろう。
ゆっくりと近づいてくる男は、今まで生きてきて味わった事もないほどの色気を放っている。本能は逃げろと警報を鳴らす、なのに一歩も動くことができない。男は真っ黒な姿からは想像もつかないほど、美しい青い目をしている。深い青から薄い青へと、グラデーションになっている事に気付くほど男は近くに来ていた。
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