プロローグ

3/3
前へ
/15ページ
次へ
思わず男から目線を外せば、自分が震えている事に気が付いた。男の骨ばった手が俺の頬へと触れられる、殺される。そう思った時、今までの雰囲気とは打って変わり、とても優しい感触が額に降りてきた。 「庶民は庶民でも、お前は違う」 あまりの衝撃に動けずにいれば、男の手が顎に当てられ上へと向かされる。自然と外れていた視線が合わさり、ただ視線が合っているだけなのに、なんとも言えない空気があった。自分でもわかるほど顔が赤くなっていく。 そのまま男に唇を奪われた。 口付けはどんどん深さを増して生き、まるで食されている気分になる。 「んっ……はぁ…っ」 男の唇が離れ、どちらのとも知れぬ唾液が糸を引く。 荒い息をしている自分に対し、男は優雅に微笑む。 そして、男と俺は見つめ合いながら、どこからとも無く現れた黒い穴へとゆっくりと落ちていく。 「ようこそ…我が国へ」 私の愛する犬よーー。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加