12人が本棚に入れています
本棚に追加
あの出会いから何回、何百回と迎えた雪が降る季節。
あの男に出会い、世界は真っ二つに裂かれ、俺は死ぬ事も老いることも許されないモノに。もう人間と言うには余りにも自分はおかしい存在になった。だからと言って、あの男と同じ存在とは言えない。
ーーレンー
俺がまだ人間だった頃、両親から与えられた名前。唯一あの男に奪われず、与えられずにいるもの。
「……あ"ぁ…ぐッ…」
感傷に浸っていると、声にならない声が足元から聞こえる。
先ほど俺が切り裂いた喉を抑えピクピクと震える人間。あの頃の俺が想像もしなかった未来、俺はあの男の犬として多くの命を奪った。
「あんたの来世は幸福でありますように」
いつからか、奪い取る命に来世の幸福を願うようになったのは。
いつからか、何も感じなくなったのは。
足元の人間にとどめを刺し、俺は俺の居場所へと帰る。
そのために踏み出した足場がーーー爆音とともに崩れた。
ドオオォォン!!
久しぶりの痛みだ。
「………ぁあ…油断、し…た」
爆炎が消えかかる中、埋もれた瓦礫の隙間から、人影が見えた。
最初のコメントを投稿しよう!