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人影の数は見える限り2人。でも足音の数からしてまだいる。
久しぶりの痛みにしても、偉く不思議なぐらいに体に力が入らない。バラバラにされても燃やされても死なないとは言え、なにかを火薬の中に入れられていたんだ。
いつの間にか近づいていた人影の一人に髪を捕まれ、瓦礫から引きずり出された。
「……あ…れ?人間…かな?」
俺を引きずり出した男は、黄金の髪を風に靡かせ、綺麗な赤い目を少し見開いた。俺の背中には羽があるわけでもなく、勇ましい角があるわけでもなく、姿形はあの日のまま。人間だった。
男は俺を慌てて降ろし、大丈夫?やらどうしようやら独り言を吐いている。
ふと気づいたことがあった。
黄金の髪の隙間から見えるこの男の耳に、昔どこかで見た紋章が見えた。
ーーあぁそうか。
この男は勇者だ。
人間達が何年、何百年も待ち続けた勇者様。あの男を倒す存在となるもの。
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