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「え・・・?」
伊織は目をまんまるにして、顔を上に向けた。
高校生くらいの少年が、鋭いアイスグレーの瞳で睨むように自分を見下ろしている。
「そんな、腕なんて折れたら僕死んじゃいます」
「は? 死ぬかよ。っつか、怪我ねぇんなら起きろ」
ぐいと腕を引かれて、伊織は「痛いっ」とまた情けない声をあげてしまい、驚いて手を離したその少年の膝上に突っ伏した。
「おい?」
「あいたっ、鼻打った」
伊織はあわわ、と少年の膝に片手を置きながら身体を起こして、ずり下がった眼鏡を押しあげた。
顔をあげたら、すぐそばに陽を集めたみたいな濃い金髪と、冴えたアイスグレーの瞳があって、その色彩の鮮やかさに伊織は怯えた。
(ま、眩しい・・・・・)
気後れして、自然と身体がすくんでしまう。
少年が首をかしげた。
「? ・・・・・あんた、変わった匂いするな」
伊織の白い狩衣の袖をつかんだ少年が下を向いて、すんと匂いをかぐ。
「・・・あ、え、あの、衣に香(こう)を焚きしめているので」
伊織は上衣が白い、神主の装束に身を包んでいる。
「香? 服に香水かけてんのか。カラダじゃなくて?」
濃い金髪がサラッと鼻先をかすめる。
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