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ビクつく伊織の腕に手をかけた少年が、すっと伊織の首筋に顔を寄せてきて、またすんと匂いをかいだ。
「変なの。おまえはなんか甘い匂いすんのに、服に別の匂いつける意味ってあんの?」
「え、え・・・・あ、これはウチの神主装束というか、外出時はいつも姉がこれを用意してくれてます、ので・・・あの」
(こ、コワイ・・・・近い)
ずずっとお尻でずって後ろに身を引いた伊織の袴の裾を、少年が地面に縫いとめるように手で押さえた。
「なんで逃げる?」
「えっ・・・・だ、だって」
(なんだか捕まった気がする・・・大きな金色の獣に、尻尾を押さえつけられて、逃げられない、みたいな・・・)
ぬっと大きな前肢が・・・・じゃなかった、右手が伸びてきて、人差し指が頬を押しあげるように触れた。
「あ・・・・・っ」
頬の触れられたところにピリッとひりつく痛みがはしって、伊織はきゅっと目を閉じた。
痛みにめちゃくちゃ弱いという自覚はある。
「大げさだな。その眼鏡でちょっと擦れただけだろ」
「でも触ったら、い、痛い・・・です」
おずおずと見上げて言ったら、すっと眼鏡をはずされて、伊織はびっくりしてまた目をつぶった。
ちゅ、と頬に冷たい感触が押しつけられる。びくっと肩が震えた。
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