伝説のはじまり

8/14

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
レース後、ロッシーは言葉もない様子で、普段自信に満ち溢れている彼はそこにはなかった。 ただ、一言だけ、押しつぶすような声でつぶやいた。 『あの馬は難しい…』 短いインタビューが終わった。 この結果を見れば、誰もが次のレジェンドに騎乗するのは俺になる流れだ。 (間違いない。俺はいつでもいけまっせ!) しかし、世の中そんなに甘くない。 ロッシーがリベンジしたいと次の騎乗を志願したらしく、あっさり決まってしまった。 レースは2ヶ月後。 ただ、世の中捨てたもんじゃない。 熱狂的な競馬解説者の新庄さんが、ツイッターで 『なぜ、桐生に乗らせない!桐生以外、考えられんだろう!』 とつぶやいた所、さすがフォロワーが18万人いるだけのことはある。 次々と俺の騎乗を願うメッセージが合い継いだのだ。 俺は感動した。 (乗りたい。あいつとまた、走りたい…) そんな思いが、ツイッターを見るたびに込み上げてきた。 だが、現実は残酷だ。 時は流れ、2ヶ月が過ぎ、レジェンドの10回目のレース当日を迎えた。 パドックでレジェンドの鞍上には、俺ではなく、ロッシーの姿があった。 今日のレジェンドは落ち着いている様子だ。     
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加