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レース後、ロッシーは言葉もない様子で、普段自信に満ち溢れている彼はそこにはなかった。
ただ、一言だけ、押しつぶすような声でつぶやいた。
『あの馬は難しい…』
短いインタビューが終わった。
この結果を見れば、誰もが次のレジェンドに騎乗するのは俺になる流れだ。
(間違いない。俺はいつでもいけまっせ!)
しかし、世の中そんなに甘くない。
ロッシーがリベンジしたいと次の騎乗を志願したらしく、あっさり決まってしまった。
レースは2ヶ月後。
ただ、世の中捨てたもんじゃない。
熱狂的な競馬解説者の新庄さんが、ツイッターで
『なぜ、桐生に乗らせない!桐生以外、考えられんだろう!』
とつぶやいた所、さすがフォロワーが18万人いるだけのことはある。
次々と俺の騎乗を願うメッセージが合い継いだのだ。
俺は感動した。
(乗りたい。あいつとまた、走りたい…)
そんな思いが、ツイッターを見るたびに込み上げてきた。
だが、現実は残酷だ。
時は流れ、2ヶ月が過ぎ、レジェンドの10回目のレース当日を迎えた。
パドックでレジェンドの鞍上には、俺ではなく、ロッシーの姿があった。
今日のレジェンドは落ち着いている様子だ。
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