伝説のはじまり

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伝説のはじまり

これは、若くしてダービージョッキーになりながら、落馬事故により、長年にわたりスランプに落ちた一人のジョッキーと超良血馬でありながら未勝利が続いた不運な競走馬の話だ。 『桐生さん、久しぶりっす!今日は乗るんですね!』 後輩ジョッキーの神谷が俺に近づくなり目も合わさず嫌味をぶつけてきた。生意気にも今年のリーディングジョッキー候補の筆頭だ。 『まぁな…』 あまりに勝てない俺には騎乗依頼が少ない。今日珍しく一鞍にありつけたのは、昨日の落馬負傷で乗れなくなったフランス人ジョッキーのロッシーのおかげだ。しかも本当は俺じゃない同期の田辺が乗る予定だったのだが、急遽乗れなくなり、俺になったらしい。 田辺がなぜ乗れなくなったのかは、その時は知らなかったが、そのおかげで騎乗出来ることは素直に嬉しかった。 『おい、ヒロ!』 後ろの方で懐かしい声が聞こえた。俺がデビューの頃、世話になった調教師のテツさんだ。あの頃はテツさんによく怒鳴られたもんだ。また怒られるんじゃないかと少しビビりながら振り向いた。
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