1

7/8
前へ
/8ページ
次へ
「なにも、いらない。お金も、綺麗なお洋服もいらない。………………私が欲しいのは、」 「……」 「私が欲しいのは、本当に愛しいと思える人だけ!」 そう言って顔を上げた彼女に月の光が差し込んだ。その瞳は雫に濡れて、碧く光る宝石のように煌めいていた。キースは息を呑んだ。そして── その華奢な体を引き寄せ、抱きしめた。もう離さないとばかりにきつく抱きしめた。ふわりと香る彼女の首筋に顔を埋める。 「キ、キース……?」 引き寄せられた勢いで彼の膝に跨る様に座ることになった彼女は、困惑した声を上げる。 「お嫌でしたか?」 「と、突然こんな……」 「私があなたの願いを叶えたいと思ったのですが。……ダメでしょうか?」 クスッと笑って腕を緩めるキース。自分の顔のすぐ下で不敵に笑む彼に心臓が早鐘を打つ。彼は何もかもお見通しだったのだろうかと喫驚した。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加