9人が本棚に入れています
本棚に追加
「なにも、いらない。お金も、綺麗なお洋服もいらない。………………私が欲しいのは、」
「……」
「私が欲しいのは、本当に愛しいと思える人だけ!」
そう言って顔を上げた彼女に月の光が差し込んだ。その瞳は雫に濡れて、碧く光る宝石のように煌めいていた。キースは息を呑んだ。そして──
その華奢な体を引き寄せ、抱きしめた。もう離さないとばかりにきつく抱きしめた。ふわりと香る彼女の首筋に顔を埋める。
「キ、キース……?」
引き寄せられた勢いで彼の膝に跨る様に座ることになった彼女は、困惑した声を上げる。
「お嫌でしたか?」
「と、突然こんな……」
「私があなたの願いを叶えたいと思ったのですが。……ダメでしょうか?」
クスッと笑って腕を緩めるキース。自分の顔のすぐ下で不敵に笑む彼に心臓が早鐘を打つ。彼は何もかもお見通しだったのだろうかと喫驚した。
最初のコメントを投稿しよう!