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お世辞にも決して立派とは言えない店構えだが、店主のカクトス親方の豪快な人柄と豊かな料理の味で、客足は絶えないほど繁盛していた。
「ハイドラ、今日はもうあがっていいぞ」
厨房の隅で馬鈴薯の皮を剥きながら呆けていた僕に、親方が声をかけた。
「えっ?でもまだこんなにありますよ。明日の開店に間に合わないんじゃ」
僕は背後に積んであった野菜袋の山を見てぼやき半分に応える。
「大鳥居の頭が雲で見えんから、明日は午後から雪になる。客は少ないさ。
それにお前はさっきからニヤニヤしっぱなしで気持ち悪いぞ。明日から僕はハーヴェストに……なんて甘い妄想していたのだろうがな」
親方はひげだらけの顔でガハハと豪快に笑う。
「そ、そんなにニヤついてましたか 」
僕は顔が赤くなる。
ここ何日かは同じネタでからかわれていたので、気を引き締めたつもりだったが、そんな事は親方には全てお見通しだった。
「いつも言ってるが迷宮の中では気を緩めるなよ。少しの油断が死につながる。
ここにある野菜どもとはまるで違う」
親方は袋詰めされた野菜を肘下の義手で指した。
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